相談例8 遺産を受け取らないための「相続分の放棄」と「相続放棄」を混同したケース

私は亡くなった方の相続分は一切受け取りません。放棄します。そういう書面に印鑑も押しました。

だから私は相続には関係ないでしょ?

回答

よく相続についてのご相談を受けると、「相続分の放棄」と「相続放棄」を混同している方とお会いします。

こうした場合、多くの方は下記のようにお考えのようです。

「亡くなった方の遺産を一切受け取らない遺産分割協議書に実印で捺印した → 自分は相続には一切関係がない」

上記を相続分の放棄といえるかというと、法学的にはこれまた違うのですが、このように考えられている方が多いのも現実です。

「相続分の放棄」と「相続放棄」との一番の違いは、前者は「相続分」が無くとも「相続人」であることには変わりはありませんので、借金などの負債から逃れることができない、という点です。
本当にこの点だけは声を大にして申し上げたいです。

一切のリスク無く相続と無関係になりたければ、現在の日本の法制度上、家庭裁判所での「相続放棄」しかありません。誰か特定の人の相続分を増やしたければ、相続分の譲渡をすればよいです。

他の相続人に法定相続分と同等の持分を与えたい場合でも、後々のトラブル防止のため私ならば、各相続人への相続分の譲渡証書の作成をお勧めします。

余談になりますが、相続分の譲渡という考えが実務上ある以上、相続分も放棄できると考えるのが当然です。
しかし、実際の話し合いをしている際に使われることは稀といえます。

(弁護士の先生ともこうした話をしますが、実務上、紛争になった遺産分割調停などで、後腐れなく手続きから離脱する場合に使われるケース程度とのことです)

よく似たケースとして、子供全員が善意で「相続放棄」をしてしまい、トラブルになってしまうパターンも良くみられます。下記をご参照になさってください。

相談例10 父親の相続財産をすべて母親に相続させたいケース(1人息子の相続放棄はキケン)

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