<コラム>孤独死した方の相続・葬儀代について①

葬儀代について、たまに相談を受けることがあります。

分かりやすいかと思い、以下は弊所に寄せられたご相談の中の一例を記載してみました。

ご参照ください。

*下記は幻冬舎ゴールドオンラインさんに掲載された文章の原文となります。

幻冬舎ゴールドオンライン

 

 


神奈川県内に住むAさんが神奈川県警のある警察署から電話を受けたのは、今から1年ほど前の事だ。

 

「お兄様がご自宅で亡くなったようです。申し上げにくいのですが、死後かなり経過している状況です。ご遺体の引き取りをお願いしたい」

 

Aさんの心の中では悲しみや驚きの感情よりも先に、「参ったな」との思いがよぎった。

 

兄とは疎遠で、Aさんが大学進学を機に上京して以来、もう30年以上は会っていない。いや、もっと長い間だろうか。

 

兄は若い頃から飲食関係の仕事を繰り返し、夜の仕事を転々としていたようだ。

人当たりは良く、口先だけは調子はいいが、何をやっても長続きしない。

 

知人や両親からお金を借りて自分で店を出したこともあったらしいが、そのたびに繫盛しても潰したりを繰り返し、と風の噂で聞いていた。

既に亡くなった両親も見放して、とうの昔に縁を切っていた

 

だが兄には、子どもがいたはずだ。離婚していたが、確か女の子でもう20代後半くらににはなっているはずだ。そのことを連絡をくれた警察官に問い合わせると、

 

「個別のご親族の状況について詳細は言えませんが・・・。連絡の取れる親族で、ご遺体の引き取りをしてくれているご親族に連絡をするしか我々もできない」との回答だった。

 

いくら疎遠だった兄でも死んで亡骸となってしまった今、このままにしておく訳にはいかない。仕方なくAさんは警察署に駆け付け、変わり果てた兄と対面した。

 

その後は怒涛のような忙しさっだった。

 

不審死扱いになるので検死の費用、遺体の搬送費用、これらを神奈川県では遺族が負担するとの事だった。腑に落ちないが「そういう制度なので」と言われたので払うしかない。また警察から何社か紹介を受けた葬儀会社に、火葬や簡単な葬儀をしてもらう。

 

これだけでなんだかんだで合算すると50万円以上の出費になってしまった。

旅費なども合わせると、さらなる額の負担となり思わぬ出費となった。

2週間程後、無事火葬が終わり、兄は遺骨となった。

警察から遺留品として兄の銀行通帳も渡された。

中を見てみると、直近で500万程の金銭がある。

また結婚した当時に買った兄の自宅の、古いマンションの名義も兄の名義のようだ。

 

この預金から葬儀代を貰っていいのですか?と警察などに問い合わせても

「それは銀行に問い合わせてください」

としか言わない。

 

兄の遺骨についても困ってしまう。両親の気持ちを考えると実家の墓には入れたくない。

両親は実家に兄が訪れる事も許していなかったし、晩年は絶対同じ墓には埋葬しないでくれ、と言い残されていた。

 

お骨はどうすれば、と警察官に聞いてみても、

「それはご親族の事なので皆様が決めてください」

としか回答がない。ごもっともだが、こっちも善意で火葬しただけなのに困ってしまう。

 

Aさんはさらに、兄が通帳を持っていた銀行にも問い合わせをしてみる。

「まずは亡くなった方の出生までの戸籍を全て取得して下さい」

との事なので、今度は市役所への問い合わせだ。

 

市役所で戸籍を取ろうとすると、当初は門前払いされた。

「兄妹には戸籍を取る権利はありません。私たちは、市から業務委託を受けている派遣会社の者なのでマニュアル以外の事は対応致しかねます」

との回答を繰り返すばかりで、戸籍を出してくれなかった。 

その後、市の職員に対応を代わってもらい、兄の娘に対して、兄の死亡や相続が発生していることを伝えないとならない事、葬儀代を立替えていることなどの必要性の事情を説明し、正当な事由がある事などを書面で申し立てて、ようやく亡き兄の戸籍を取ることができた。

 

それを持って銀行にAさんが行くと

「子どもがいるのでこの方のみが相続人です。きょうだいの方に相続権は一切ありません」と、にべもない対応だ。

 

兄の戸籍からの手がかりで、また戸籍の取得だ。

いちいち理由を説明しなくてはならないので、とんでもなく手間がかかる。

しかしながら数か月の後、やっとのことで兄の娘の住所を知ることができた。

 

Aさんはまずは書面で、兄の娘に手紙を書く。まず父が死亡した事、そして葬儀代をAさんが支払ったこと、まず電話でいいので連絡を欲しい事などを記載した。

 

殆ど面識がないとはいえ、姪にあたる親類だ。年頃の女性だし、父の死亡を知って悲しむかもしれない、そんな思いだったAさんに兄の娘から思いもよらぬ電話がかかってきた。

 

「おい、なんでお前が私の住所知ってんだ!」

「あんな父親が死のうが知ったことか。いちいち知らせてくるんじゃねえ」

若い女性のいきなりの怒号に近いような口ぶりにAさんは絶句した。

その後も兄の娘は支離滅裂な言葉を繰り返す。自分の人生が上手くいかないのは、父親がしょうもないせいだ、などと喚くばかりで会話にならない。それでもAさんは諦めずに要点を話す。

 

何故か警察に娘ではなく、Aさんに遺体の引取りの連絡が来たこと。

Aさんが火葬や葬儀を費用を出して行ったこと。

また兄には預金と自宅不動産など、若干の財産と呼べるものがあること。

遺骨の引取りもあるので、相続するのならそれで構わないので、遺骨や相続手続きなど、親族として協力して欲しいことだ。

 

すると、兄の娘の対応が少し変わる。

「警察からは何度も連絡があったが、私には関係がないので無視をした。相続手続きについては、協力してやるかやらないかは追って考える。通帳など全て送ってくれ。遺骨は家が狭いので、とりあえずは送らないでくれ。」

Aさんは仕方ないので、通帳や不動産の権利証(登記済証)らしきものを、兄の娘に郵送で送ることにした。

 

②に続きます

<コラム>孤独死した方の相続・葬儀代について② | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

*相談者のプライバシーを守るため、一部実際の内容から改変している部分もあります。


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