遺言の重要性(人生最後の願いを叶えるための遺言)

(2021年8月19日更新)


相続トラブル、いやトラブルと以前の問題として、ただ単に相続の面倒になってしまう理由の一つに、遺言書が無い事が理由であることが多いです。弊所の個人的な感想では、横浜市内でも亡くなられた方で遺言を残されている方のイメージは、個人的な感覚では5%~10%くらいです。

実際に亡くなる人の何人に1名が遺言を残しているのか、などの公式のデータは見当たらない。このため大雑把な方法で下記のように推測をしてみます。
遺言は主に公正証書遺言と自筆証書遺言の2つだ。公正証書遺言については、必ず公証役場で公証人が関与して作成されるので、公証人連合会のデータを用いる。自筆証書遺言は必ず家庭裁判所での検認を経ない限り、不動産登記などには使えないため、概ね家庭裁判所の検認数と合致します。

令和元年のデータは下記の通りです。
1. 公正証書遺言の作成数 「11万3137件」 令和元年
   (*日本公証人連合会 ホームページより 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)
2.自筆証書遺言の検認数  「1万8625件」 令和元年
      (*法務省 司法統計より)
それに対して、令和元年の死亡者数は137万6000人です。
(厚生労働省:人口動態統計の年間推計による)

死亡者数年間137万余りに対して、何らかの遺言を残した人は年間約13万人。もちろん1の公正証書遺言については「作成」をした件数であり、実際にその年に亡くなった数とは異なります。かなり大雑把な計算ですがが、概ね10%を切るくらいの割合であり、現場の肌感と相違がないことが推定されます。これでも公正証書遺言の作成数は、平成24年では8万8000件程度とのことなので、だいぶ増加しているといえます。

(*ちなみに令和2年はコロナの影響もあるのだろうが、公正証書遺言の作成数は9万7700件と、10万件を切っています。)

公正証書遺言を作成する人が、この7年ほどで30%ほど作成件数が増加しているにもかかわらず、それでも遺言を残している人は未だ死亡する1割にも満たないのが現状です。
これには遺言という言葉に対するネガティブなイメージがあると思われます。

よく家族が遺言者に、または士業が相談客様に対して、「遺言を書いた方が良いのではないですか?」と言うと帰ってくる反応は、往々にして下記のようなものです。
「相続税の対策だよね」
「金持ちが書くものだよね」

中には
「俺を殺す気か」
とか
「私は死なない!」
などとこれまでの人類の歴史上、誰も成し遂げていない事を仰る方もいます。

対して、遺言を書く必要性を認識している人の遺言作成は驚くほどスムーズに進みます。
こうしたケースは
・家族以外(内縁の女性など)に遺贈したい。
・どこかの団体などに寄付をしたい
・余命宣告を受けた
・近しい人(両親や配偶者)の相続争いになった
または、争いにならなくても面倒な思いをした
などの方々です。

弊所で遺言を作成したのも殆どがこうした方で、健康である日「遺言を書きたい」というような飛び込みの相談は殆どありません。

遺産が300万円でも3億円でも、適応される法律は同じ民法だし、手続きに差異はありません。このくらいの相続額でも、せめて何かしらの遺言を書いておけば良かったのに、と思うケースは現場で大変に多く遭遇します。

(下記に続きます)

遺言がないがために果たせなかった故人の夢 | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

*本件は筆者の業務上の経験に基づき記載しております。個人情報保護のため、内容は一部改変を加えております。

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。


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