不動産を相続したら「最初に行うべき」ことは?司法書士が相続登記の重要性と流れを解説!
当事務所では横浜市を中心に神奈川県全域から相続の無料相談をいただいております。
その中で不動産を相続したがどうすれば良いのか、注意点などがあれば教えてほしいというご相談を多々いただきます。
相続手続きは多くの人にとって人生で初めての経験になるため、事前に注意点を知っておかないと後からお金の面でもご家族の関係性の面でも時間の面でも後悔されるケースもございます。
今回はそのようなことにならないために不動産を相続した場合の注意点を司法書士が解説します。
相続不動産の最初の一歩は「相続登記」から
不動産を相続した場合、まず最初に着手するべき手続きは何かというと、「相続登記」です。
これは登記という作業が重要なだけでなく、その後、不動産を売却などする上で、すべての出発点となります。
相続登記を怠ると売却するにしても、賃貸するにしても、また不動産を担保にして融資を受けるなどにしても、あらゆる不動産の手続きは進められないことになります。
登記を放置していると、時間が経過するにつれ相続人が増えていき、共有者の数も増え、最終的には、現実的には話し合いが困難な事態になります。
司法書士として相続の実務に関わっていると、「もう少し早く登記をしておけば」という声をよく耳にします。
それほど相続登記が最初に取り組むべき事案なのです。
また令和6年4月から、相続登記は義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請することが法律で定められており、正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。
従来は義務ではなかったために登記が放置されることも多く、それが全国的に「所有者不明土地」という深刻な問題を生んできました。
今回の法改正は、こうした社会的課題を解消するためのものです。
不動産の種類によって、相続した後に必要となる手続きには若干の違いがあります。
マンションを相続した場合にすべきこと
まずはマンションの場合です。
マンションを相続した場合、必要となるのは残置物の整理です。
衣類や家電、衣類、衣服など、亡くなった方が使用していた生活品がそのままになっていることが大半でしょう。
マンションを売却にするにしても、賃貸をするにしても、これを片付けない限りは行うことができません。
こうした残置物遺品整理は、近い肉親を亡くされたばかりの相続人には、肉体的にも心理的にも非常に負担が大きいと言えます。
また現実問題として冷蔵庫などの大きな家電を処分するのは、専門の業者さんでなければできないと言えます。
どうしても費用がかかってしまいますが、実際に不動産を活用しようと思うと、相続登記と並んでこうした残置物の整理は大変重要です。
残置物の整理業者にもいろんな業者がいますが、私たちのような専門書が長年関わっている業者さんは、例えば、不動産の権利書や売買契約書などの重要な書類については、取り分けてくれることがほとんどです。
こうした書類がないと、後の不動産売却の際の税務申告などで不利益を被ることがあるので、遺品整理業者さん選びも重要と言えます。
戸建て住宅を相続した場合
さて続いて戸建ての場合です。
戸建ての場合は土地がありますので、もう少し追加の作業が必要となってきます。
まず重要になるのが画定測量です。
境界が未画定の土地は、原則売却することができないと言えるでしょう。
買う方としては、隣地との境界が曖昧な土地、また紛争があるかもしれない土地というのは、なかなか買ってくれないのが現実でしょう。
確定測量とは、土地家屋調査士が現地で境界を調査して測量をし、隣地を持つ所有者との立ち会いで、署名捺印をいただいて初めて成立するものです。
隣地所有者が遠方に住んでいたり、また最近では海外に居住をしている方だったり、また何かしらのトラブルがあって境界承諾に非協力的であると、数ヶ月から場合によっては一年などの時間がかかることもあります。
費用も数十万から100万以上となりますので、相続にとっては大きな負担ですが、どうしても避けられない必要経費といえるでしょう。また老朽した建物が残っている場合、売買契約の内容によっては解体工事をする必要が出てきます。
売却をしないにしても空き家のまま放置すると、倒壊や火事のリスクなどがあり、近隣から苦情が出る原因ともなります。
また、あまりに空き家を長く放置していると、所在する市区町村から「特定空き家」に指定されるなど、撤去を命じられるような場合もあります。
【特定空き家の認定基準】
・放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空き家に指定されると、固定資産税が4倍程度、最大6倍近くまで跳ね上がる可能性もありますので、注意が必要です。
売却を予定している場合は、売買契約がまとまってから更地にすることでも十分間に合うことも多いですが、古い建物の場合、売却の際に空き家控除という売却所得税の控除を受けられることがあります。
かなり要件が厳しいので注意が必要ですが、この控除を受けるためにも、実務上は解体が必須となってきます。
不動産を相続した場合の固定資産税
さて相続した不動産に対しても、当然固定資産税が課税されます。
では納税義務者は誰になるのでしょうか。
この点については、相続登記が完了していれば、あまり心配は不要です。
固定資産税は、毎年1月1日の時点での登記簿上の名義人に自動的に納税義務が移る仕組みとなっています。
このため、市区町村へ特別な届出は不要です。
逆に、相続トラブルなどがあり速やかに相続登記を行えない場合、市区町村の方から納税管理人などの納税代表者の選定などを求められる書類が届くことがあります。
これはいったん代表者になってしまうと、登記の名義を変えない限り、その方に延々と納税通知書が毎年届くことにもなります。
遺産トラブルなどで家庭裁判所での調停などになっている場合はやむを得ないのかもしれませんが、そうでない場合は早めに相続登記をして、所有者と納税義務者が一致するように行っていくことが大事です。
相続した不動産の火災保険について
また忘れがちなポイントとして、火災保険の名義変更があります。
火災保険については、所有者と契約者の名義が一致していないと、万が一、火事などが発生した際、保険金が支払わない可能性もあります。
そのため、相続登記が完了した後は、速やかに保険会社に連絡し、契約者の名義を変更することが大事です。
その場合、相続登記後の登記簿謄本の提出を求められることもあります。
相続後に不動産を空き家のまま放置すると、保険会社が契約を引き受けない、あるいは割高な空き家専用の保険しか加入できない場合もあります。
場合によっては、木造の築古などでは、火災や労災リスクが高いため、火災保険の加入を拒否されるケースもあるでしょう。
このため、空き家となった不動産については、利用方針を早めに決めることをお勧めします。
まとめ
このように相続した不動産を万が一放置してしまうと、税金や保険、管理、隣地との関係など、さまざまな面でリスクが増えていきます。
最初の一歩である相続登記を早めに済ませることで、固定資産税や火災保険などの問題も整理されます。
また売却をするにしても賃貸をするにしても、不動産の活用がとても楽になります。司法書士は相続の専門家として、必要書類の収集や戸籍の調査、遺産分割協議書の作成、登記申請まで一環としてサポートすることができます。
また、土地家屋小査士さんや解体業者さんなども、司法書士が連携していることが多いので、測量や解体といった関連業務についても連携して進めることが可能です。
相続した不動産をどうすればわからないという段階でも、まずは司法書士に相談することで、必要な手続きの全体像が整理されるかもしれません。
相続登記を起点に、相続不動産の適切な管理・活用を進めていくことが、相続人にとって最も大切な一歩と言えるのではないでしょうか。
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