自筆証書遺言のよくあるミス、無効にならないための注意点とポイント
相続が発生した場合、その後の手続きは大きく二通りに分かれます。
司法書士であれ、税理士であれ、弁護士であれ、どんな専門職も同じことを言うと思いますが、遺言がある場合とない場合に分けて考えると思います。
遺言については、やはりまだまだ準備をされている方の方が少数派ではありますが、最近では遺言を残される方が増えてきています。
遺言には主に2種類あり、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
私たち専門家が関与するような場合は、自筆証書遺言はよほど緊急な場合を除いて作らないことが多いのではないでしょうか。
自筆証書遺言は費用をあまりかけずに手軽に作成ができる一方、形式が不備であったりして遺言が無効になってしまうケースなども多いです。
ここでは私がこれまでの司法書士の経験で遭遇してきた自筆証書遺言の典型的なミスやポイントについて説明をしていきたいと思います。
自筆証書遺言を成立させるための要件
自筆証書遺言に求められる要件としては、主に4つあります。
まず1つ目に全文が自筆で書かれていること。
こちらは直近に法改正があって不動産の登記簿などはワープロ打ちであったり登記簿謄本を添付しても良いようになったのですが、基本的に遺言に関する部分は全文が自筆であることが基本です。
2つ目にまた明確な日付があること。
3つ目にそして自己の氏名の自書があること。
最後に4つ目として押印です。
よくある遺言が無効になってしまうケース
ここからは遺言が無効になってしまうケースやそれらを避けるためのポイントを解説します。
日付が曖昧(吉日など)のケース
司法書士の試験などでもよく出るような、典型的な遺言が無効になる要件として、遺言の日付を令和7年5月吉日などとしてしまうことがあります。
これは日付を特定できないため、判例でも明らかに無効とされています(最高裁昭和54年5月31日第一小法廷判決)。
また押印については、実印でなければいけないと思っている方も多いですが、これは認印でも三文判でも、また拇印でも構いません。
財産の特定が不十分なケース
更に形式面の以上によく見られるミスに、財産の特定が不十分という点が私のこれまでの経験ではよくみられます。
やはりミスが多くなるのは不動産についてです。
不動産について、例えば「横浜市の不動産」などとしか遺言に記載がないケースです。
この場合、横浜市に仮に1つしかない不動産がない場合でも、本当にその不動産が遺言で示した当該不動産なのか、相続人や法務局、裁判所などの第三者機関にとっては100%の核心を持つことは難しいと言えるでしょう。
このため登記の段階で法務局が申請を受け付けてくれないというケースも見られます。
不動産の記載が住所表記のケース
不動産については更に注意点があり住居表示で書いているケースになります。
これも大変よく見られます。
いわゆる「何丁目何番何号」という記載です。
都市部では基本的に住居表示が実施されているため、実際の不動産登記簿で不動産を特定する、いわゆる地番と住居表示の番号というのは異なることが通常です。
このため遺言の記載の不動産が相続財産の不動産と一致しているか(地番で指し示す不動産と一致しているか)が特定できないため、亡くなった後の肝心の不動産登記の申請の段階で、申請を受け付けられない、というケースも見られます。
不動産の詳細(私道・二項道路)などの記載がないケース
不動産についての3つ目ですが、いわゆる私道の部分、二項道路、位置指定道路に関するところの記載がないケースというのも、これまで見てきました。
これらは近隣の居住者と共有持ち分として道路として使っていたり、市に通行を許可するなどをしているため、いわゆる固定資産税は毎年課税されていないことが多く、固定資産税が非課税の不動産となり、毎年の納税通知に記載されないことが多いです。
このため納税通知書などを見て遺言を書いたとしても、この部分が漏れてしまうこと多々があります。
この部分が漏れてしまうと、最悪、接道が取れない不動産などになってしまうなどの恐れもあります。
遺言があったとしても漏れている部分になるため、この部分だけ別途遺産分割協議書が必要になり、この協議がまとまらない限り、最悪のケースでは再建築不可になってしまう場合などもあります。
接道の取れないと不動産の価値がつかなくなってしまいます。
このような非常に細かいミスが、不動産にとっては致命傷となることもよくあります。
とにかく不動産については、登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本の通りに、地番、家屋番号を正確に書くことが大変重要です。
金融口座の記載漏れがあるケース
次に金融機関について、こちらの私が見てきた自筆証書遺言での記載漏れ、記載ミス、記載の不十分などについて記していきたいと思います。
金融機関の財産も遺言に記載する場合、金融機関名、支店名、口座、番号、種類まで特定した方が、やはり混乱を避けられるといいます。
よくあるケースとして、「〇〇銀行は長男の誰」「××銀行は次男の誰」などと記載をしているものがありますが、遺言を書いた後に銀行が増えてしまったりすることもあります。
また、そもそも自分の銀行口座をすべて把握している方は非常に少ないと思います。
こうしたことにより、そもそも遺言から漏れてしまっている金融機関、証券口座などが存在することが、自筆証書の遺言の場合は非常に多いです。
こうしたミスというか「財産の記載漏れ」というのも、自筆証書遺言において大変に多くみられることです。
相続人の特定が不明確なケース
また、少し細かい話になってしまいますが、私が実務で経験したこととして、相続人の書き方、特定が不明確であるという点を挙げられたことがあります。
例えば、ある末期がん患者の方の実質証書の遺言で下記のようなケースがありました。
この方は末期がんということもあり、体力がないのか、遺言書が全て「ひらがな」で書いてありました。
この方は子どもがいないため、兄弟や甥姪など相続人が非常に多い方で、20人近くいる方でした。
最も近い兄弟にすべての財産を残すという遺言を残されましたが、弟様の名前の漢字の読み方が特殊だったこともあり、その方のお名前を、仮に「太郎」だったとしますけれども。この「太郎」さんが本当に弟の「太郎」さんなのかということを法務局から疑義をつけられたことがあります。
結論としては諸々の書類を他に保管をするなどして登記が通りましたが法務局の観点としては弟の何々、姪の何々、甥の何々などとの記載がない場合、人物の同一性を担保出来かねるため、不動産の登記を取り扱う場合は怖いと言われたこともあります。
遺言についてはやり直しがききませんので、このような点は細かいですが非常に難しいところではあるなと感じました。
遺言のミスを減らすために
さて、こうした遺言の自筆証書のミスなどを減らすにはどうすればいいでしょうか。
やはり私としては専門家ですので、公正証書遺言の作成を強くお勧めします。
公正証書遺言の場合、2名の証人もいますし、元の遺言は公証役場で補完されるためなくなることもありません。自筆
証書遺言の場合は、そもそも遺言がなくなってしまった、破棄された、燃やされてしまったなどのケースも見られますし、こうなってしまうと、遺言者が亡くなられた後は、もうこれは取り返しのつかないことになってしまいます。
それでもどうしても自筆証書で遺言を書く場合というのは、これはよくお客様に申し上げますが、出来る限り「全ての財産」になどのような記載でお願いするようにしています。
例えば「全ての不動産」であったり、「全ての預貯金」、もちろん「全ての財産」を例えば姪の誰々に残す、長女の誰々に残す、というような遺言です。
これらは非常にシンプルな遺言ですけれども、こうした遺言の場合は、少なくとも相続財産の記載漏れという可能性は生じません。
全ての財産について書いてあるわけですから、遺言者が亡くなった時点の全ての財産についてが遺言の対象の財産となります。
こうしたお話をすると、そんな単純なことでいいのかと思われる方も多いですが、なるほどとご理解をいただいて、遺言書の作成の参考にされる方もおります。
何度も繰り返しますが、基本的には公正証書での遺言の作成というのを強くどの資料もお勧めすると思いますが、どうしても自筆証書で遺言を作成されるという場合、こうした点に気をつけられて遺言を作成されてみてはいかがでしょうか。
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