「相続放棄」ができない、認められない事例とは?注意点を司法書士が解説!

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人/死亡した人)の相続の権利の全てを放棄することです。

日本の場合、戸籍制度が世界でも稀に見るほどしっかりしていることから、法定相続人については戸籍を通じて相続関係を判断します。

戸籍上の親子関係などの相続関係を破棄したりなかったことにはできませんので、法定相続人としての義務を絶ち、相続の繋がりを唯一の否定できる手段は「相続放棄」のみとなります。

相続放棄を行うか、悩まれるのが下記のような場合以下の通りです。

・被相続人(亡くなった人/死亡した人)に明らかに負債がある人
・被相続人(亡くなった人/死亡した人)の財産が僅かで面倒を避けたい人
・被相続人(亡くなった人/死亡した人)と疎遠で、生活状況や財産状況が不明な人
・被相続人(亡くなった人/死亡した人)の財産を感情的に受け取りなくない人
・共同相続人どうしで揉めていて関わりたくない人

被相続人の負債を回避するだけでなく、遺産が少なく手続きが面倒な場合や相続トラブルを避けたい場合も、相続放棄は有効な手段となっています。

相続放棄するには「家庭裁判所で手続きを行う必要」がありますが、万が一裁判所で認めてもらえないとなると、大変困ったことになります。

次に、相続放棄が認めらない事例を確認してみましょう。

①財産を既に消費しているケース

相続人が相続財産の一部、または全部を消費した(預貯金を用いた)場合には、単純承認と見なされてしまいます。

ただやむを得ず被相続人の葬儀費用を支払うため、その分だけ用いた場合などは、そうした事情をちゃんと疎明すれば 相続放棄の申述を認められるケースがあります。

②被相続人名義の不動産登記を入れてしまった、売却してしまったケース

これは登記という公示されている記録に、相続した事実が明らかに残りますので難しいといえるでしょう。

また不動産に限らず、貴金属・有価証券なども含めて、被相続人の財産を勝手に処分・売却してしまうとこの行為に当たります。

③被相続人の債務の支払ったケース

 被相続人の借金や滞納していたローンの返済などをを行ってしまうと、財産の処分に該当してしまうため、単純承認と見なされる可能性が高いです。

相続人個人の財産から立替払いした場合は単純承認に当たらないと考えられますが、後日被相続人の相続財産から弁済を受けるためには相続財産管理人などの申し出が必要になることもあり、かなり大変な手続きになります。

相続財産管理人についてはこちら

④被相続人の債権を回収した場合

被相続人が生前に他人に貸していた金銭債権などを、相続人が取り立てや弁済を受けた場合も、相続財産の処分に当たると判断されるでしょう。

⑤遺産分割協議を行った時

遺産分割協議を行うということは、「相続する意思がある」と捉えられるため、単純承認と見なされます。

よく相談に来られたお客様でみられる勘違いは、被相続人の遺産分割協議書をしたが

「自分は一円も受け取っていない=相続放棄した」

としているケースです。

司法書士などの専門家がいう「相続放棄」は、必ず被相続人の最後の住所地管轄の家庭裁判所で申述受理された「相続放棄」のことを指しています。

亡くなった後に、葬儀に遺産の調査にバタバタしていると、あっという間に3か月は経過してしまいます。

明らかに債務超過で借金ばかりだった場合は相続放棄以外に選択肢はありませんが、相続人と疎遠だったために3か月内に決断できないことも多くみられます。

・相続人と疎遠で相続放棄した方が良いのか分からない
・全く知らない地域の不動産で相続していいのか怖い

ということがあれば、専門家に相談するのをおすすめします。

ポイントとしては、大まかでもいいので相続財産について「経費と労力」「受領できる財産」を概算するのが良いでしょう。

特に不動産については、この点が大事です。

もし売却するにしても「遺品整理」「相続登記」「確定測量」「解体費用」など先払いで掛かる費用が多いため、大まかな概算がとても重要になります。

【参考】相続不動産を売却した方が良いケース 

相続放棄を悩まれている段階であれば、司法書士などの専門家のアドバイスを聞いてみることを強くお勧めします。

ぜひ相続放棄に精通している司法書士・弁護士に相談してみましょう。

相続の放棄の申述 | 裁判所 (courts.go.jp)

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。


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