不動産相続の相続税の悩みを解消! 生命保険で叶える「納税資金」と「公平な遺産分割」
相続財産の中に不動産がある場合、納税資金の確保と現物財産である不動産の分割という2つの課題が相続人に圧し掛かってきます。
特に自宅不動産が財産の大半を占める多くの家庭では、不動産を相続する相続人と、それ以外の財産を相続する相続人との間で不公平感が生じることもあり、無用な相続争いへ発展するケースもあります。
しかも相続税の納税期限の原則として、相続を開始してから10ヶ月以内と、不動産を売却するなどケースにおいては期間は大変短いものとなっています。
このため不動産の割合が多く、納税資金が不足している場合などは、急いで不動産売却をしなければならないケースも多くあります。
急ぎで不動産を処分する場合、市場価格より安くなることも当然多くありますので、結果として相続人たちに不利な結果を招くことになります。
こうした相続発生時の現金の確保にとても有用なのが生命保険の活用です。
生命保険のスピード感や設計の自由さに加え、受取人も自由に指定できる特性を生かすことで相続税の納税資金対策やはたまた、遺留分への支払の確保などの対策にもつなげることができます。
この時期では、不動産の相続と生命保険を掛け合わせ、賢く活用することにより、相続による具体的な活用点や注意点を交えながら解説していきます。
不動産相続で子が直面する「納税資金」と「不公平」という2大課題
相続税は、不動産を含めた相続財産の総額から、借金などの債務などを差し引いた金額に対して課税されます。
相続財産が数千万円単位のような一般の持ち家の家庭では、その相続財産の多くが「自宅不動産」により占められていることが多いです。
特に土地付きの一戸建ての場合、土地の路線価評価がそのまま相続財産評価となるため、自宅不動産の価値に等しい預金等の相続財産を持っていない限り、論理上相続財産のうち不動産の占める割合が半分を超えることとなります。
こうしたケースは相続の現場で日々仕事をしていると非常に多いです。
一般的なケースとして、以下に例を示します。
亡くなった方の相続財産の価値として、不動産は3000万の自宅不動産のみ、他に預貯金は1000万円あったとしますだったとします。
相続人は自宅不動産に同居する長男と、別居で他に家を構えている長女という子ども2人のケースです。
こうしたケースでは3つの展開が考えられます。
1つはきょうだい仲も良く長女に大変に理解があり、親の面倒を見た長男がすべて自宅を相続していいよ、と無償で同意をしてくれるケースです。
世の中の全ての人が相続争いをするわけではありませんので、司法書士という紛争性のない法律事務をしていると、こうしたケースは珍しくもなくよく見られるケースでもあります。
2つ目が、均等な相続割合を長女が要求してくるケースです。
これも法律的には何も間違ったケースではなく、長女の考え方としては以下のようになるでしょう。
「お兄ちゃん、この家の価値は約3000万だから、現金の1000万と合わせて半分にすると1人あたり2000万ですね。なので、預貯金は私が全部もらいます。残りの1000万は現金で用意してくださいね」
感じ方は人それぞれでしょうが、これもまた法律の観点から言うと、ぐうの音も出ない正論と言えます。
さらに3つ目としては、より最悪なケースとして長男に1000万が用意できず、紛争に発展したり、自宅の売却を長女から要求されるというようなケースもあります。
こうしたケースになると、家庭裁判所での調停や、双方の弁護士さんなどの介入を経て、もう泥沼の遺産分割争いになってしまうことも多いでしょう。
さらに自宅だけではなく、他に収益アパートを持っていたり、いわゆる多くの土地を持つ地主さんというようなケースでは、もっと相続財産のうちに占める不動産の割合が高くなってきたりします。
こうしたケースでは、そもそも相続税の額が多額に上るため、急ぎ不動産の売却をしなくてはなりません。
不動産の売却をするためには、当然相続登記が必要ですが、そもそもこ地主さんのようなケースでも、前述のような相続人間の中で争いが起きてしまうとそもそも遺産分割協議が成立しないので、売却の前提となる相続登記もできなかったりします。
また仮に遺産分割協議書が成立したとしても、納税資金の確保のために、相続財産である不動産を売り急がなくてはいけないケースというのも多く見られます。
つまり、不動産相続では、 他の相続人とのバランス(代償金への備え)をどうするか 相続税の納税資金をどう確保するか という2つの問題に直面するため、この問題に対応する必要があるのです。
生命保険で「納税資金」と「円満分割」を両立させる具体的な活用術 生命保険は、被相続人(=保険契約者・被保険者)が亡くなったとき、指定された受取人に保険金が支払われる制度です。
この保険金は、受取人固有の財産となり、原則として相続財産に含まれません。
ここが、生命保険を相続対策に活用するうえでの最大の利点です。
ご存知の方も多いかと思いますが、相続人が受け取る生命保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」まで非課税として受け取れます。
例えば、父親が死亡し、法定相続人が妻と子ども2人の合計3人なら、1,500万円まで生命保険金を非課税で受け取れます。
厳密な話をすれば、よほどの極端な額でない限り、生命保険金というのは法律的には相続財産ではない(遺産分割協議の対象ではない)のですが、これを無条件に認めてしまうと多くの相続税を課税されるような方が、ご自身の資産の大半を生命保険金にしてしまうのではないでしょうか。
このため上記の「500万円 × 法定相続人の数」を超える生命保険金は、相続税法上「みなし相続財産」として扱われます。
逆を言えば、この範囲でしたら堂々と非課税で受け取れる訳ですから、非常に使い勝手の良い制度と言えます。相続税を課税される方ならば、使わない理由が見当たらないようにも思います。
しかし、現場で相続の仕事をしていると、まだまだこの保険金の制度を使っていない方が多いように思います。
例えば、先ほど例示した長男と長女のケースで検討してみましょう。
仮にですが、被相続人の相続財産の現金の1000万を全て長男に生命保険で分け与える形にしていたらどうでしょうか。
少し極端な例なのですが、この場合、1000万は原則として相続財産には入りませんので、相続財産となるのは自宅不動産の3000万のみとなります。
仮に長男と長女の仲があまり良好ではなかったとして想定をしておきます。
長男が自宅不動産全てを相続し、長女から仮に遺留分にあたる750万(法定相続分2分の1の2分の1、つまり4分の1)を請求されたと仮定したとします。
しかし長男には1000万の保険金が確保できているので、長女に支払うべき金額を賄えることになります。
ただし、これは当然のことですが、これは長男がすべて自宅を相続するという亡くなった方の遺言があることが前提となっています。
このため遺言を作成する際、生命保険の行き先をどうするかというのは、私どもの事務所では慎重に検討をする内容となっています。
こうしたケースにおいて、遺言書で不動産をあげないのだから、長女に保険金の1000万を受取人として設定する方も多いように思います。
考え方が人それぞれなので、これが間違っているとは言えませんが、仮に長男と長女の仲があまり良好ではないような場合は、この方法はあまり良い方法とは言えないでしょう。
何故なら、生命保険は相続財産に含まれないことが原則ですから、長女としては生命保険の1000万を受け取った上で、さらに自身のの遺留分として、上記の750万を請求できることになってしまいます。
これは最悪のケースを想定していますが、万が一、こうした問題が具現化する頃には、遺言書を書いた被相続人は亡くなっているわけですから、こうした問題が起きたとしても、対処の方法がありません。
また、長女の行動も法律的に間違っているとも言えません。
相続税の納税資金としての生命保険活用
不動産を多数所有する地主の場合、上記のような「他の相続人とのバランス(代償金への備え)」をどうするか、という側面以外にも「相続税の納税資金をどう確保するか」という課題も生じます。
不動産の相続財産に比べると現金が極端に少ない「資産は多いが流動性が低い」状態では、相続税の納税資金を準備できず、急いで土地を売却したり、慌てて金融機関からの借入れをせざるを得なくなる事態も少なくありません。
特に都心部などは土地は評価額が高く、納税額が数千万円規模に達することもあります。
このような地主にとっては前述した相続争いに備えるメリット以外にも、生命保険は納税資金対策として非常に有効です。
生命保険金は、被相続人の死亡により速やかに現金で支払われるため、土地を売却することなく納税が可能になります。
さらに、保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議を経ずに受け取れるため、他の相続人との交渉に左右されずに納税資金を確保できる点も大きなメリットです。
こうしたケースの場合では、相続税の非課税枠を超える額に生命保険金を設定するケースも多くみられます。
当然、非課税枠を超えた分は「みなし相続財産」として扱われるため相続税法上のメリッとはありません。しかしながら、遺産分割協議書の結果に関わらず確実な納税資金を確保するという点でのメリットはあります。
また何よりこうした生前からの納税資金の確保する意識の備えが、万が一の際に残された相続人にとっての大きな助けとなるのは明らかでしょう。
契約形態と税務上の留意点
生命保険の契約形態(契約者・被保険者・受取人の組み合わせ)によって、課税される税金の種類が異なります。
一般的には以下の形が使われます。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税区分 |
本人 | 本人 | 法定相続人 | 相続税 |
本人 | 本人 | 配偶者以外の第三者 | 相続税 |
子 | 本人 | 子 | 贈与税 |
一番下の贈与税の課税区分のケースは避けるべきケースになります。
契約者と受取人が異なる場合、贈与税の対象となるため注意が必要です。
必ず「本人=契約者・被保険者、相続人=受取人」という形を取るようにしましょう。
不動産中心の相続では、遺産分割協議書が大きく揉めた際の備え、また納税資金の確保が課題となり、その解決策として生命保険の活用は非常に有効です。
生命保険は、現金を確保しつつ他の相続人との調整も図れる有効な手段です。
しかし、公平性を追求しすぎると受取人を指定で後日想定していなかった思わぬ落とし穴にはまることもあります。また契約形態や受取人の指定を誤ると贈与税の対象になるなど逆効果になることもあります。
このため、専門家の助言を受けながら、必ず「遺言書」との併用して準備することが「争族」回避の鍵となってきます。
- 【不動産の生前対策マニュアル】相続税対策のポイントやリバースモーゲージなどのメリット・デメリット比較
- 家族信託を検討した方がいいケースとは?場合によっては実施しない方が良いの…?
- 共有問題や認知症問題を解決するための家族信託
- 「実家を○○に継がせたい」60~80代の方向け遺言書で指定する不動産相続の成功事例・失敗例と注意点
- 資産管理法人×家族信託の連携!賃貸アパートや資産管理法人における相続の「ハイブリッド戦略」
- 不動産相続の相続税の悩みを解消! 生命保険で叶える「納税資金」と「公平な遺産分割」
- 後見制度(任意後見と法定後見)の前にできることはないの?
- 夫婦間贈与の特例とは?適応条件や注意点を司法書士が解説!
- 【相続・生前対策】遺言の重要性と書かなかった失敗を事例をもとに司法書士が解説!
- 【認知症】実家の父の様子がおかしい?資産家の財産を守る家族信託
-
お知らせ2025/07/22
-
相談事例2025/07/14
-
お知らせ2025/07/08
-
お知らせ2025/07/07
-
相談事例2025/06/27
-
相談事例2025/06/10
-
相談事例2025/06/03
-
相談事例2025/05/01
-
相談事例2025/04/25
-
相談事例2025/04/21