相続人の中に長い間生死不明の者がいる場合(失踪宣告)

▼失踪宣告とは

(2021/08/27更新)

長年にわたり不在であったり生死不明の方を死亡したものとみなし、いったんその方の相続関係を確定させるために設けられた制度です。

失踪宣告には、「普通失踪」「特別失踪」の2つがありますが、今回は「普通失踪」について解説します。

普通失踪 → 最後に連絡が取れた状態から7年間以上生死が不明である

特別失踪 → 戦争や飛行機・船舶事故等の危難が去った後から1年間以上生死が不明である

相続手続きの基本的な考え方は「全ての相続人の確定」及び「相続人全員の合意」です。
このため被相続人にあたる方が長年行方不明であったり、また同じ相続人の中に連絡が取れない方がいると、いつまで経っても不動産登記や銀行預金の解約手続きなどの相続手続きが終わりません。

こうした場合は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることがあります。

これは行方不明の状態が長期間続いている場合、その方を失踪宣告を受けて、死亡したものとする方法もあります。

行方不明となる方の数は決して少なくはありません。警察に届出があるだけでも、毎年8万5000人程度の人数で推移しています。

警察庁統計-平成29年における行方不明者の状況

そのうち失踪宣告が家庭裁判所で申立てされたものついては、およそ年間で2000~2500件程度です。行方不明で捜索願が出された方との単純比較をしても、2~3%程度の割合となります。失踪宣告については、まだまだ家庭裁判所の中でも珍しい手続きといえます。

令和元年度 司法統計

司法書士や弁護士の方でも、一生に一度も失踪宣告の申立てなどの手続きは関わらない先生も多いかと思います。相続を専門に行う司法書士法人近藤事務所では失踪宣告の取り扱いが多く、年に数回の申立てをすることもございます。失踪宣告に関する過去の相談事例は下記からご覧になることができます。

 

相談例13 25年前に行方不明になった兄がいます | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

相談例14 叔父さんの弟が行方不明でどうしていいか分かりません | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

失踪宣告申立の必要書類

下記のようなものが中心となります
①家事事件の申立書
②不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
③不在者の戸籍附票または住民票除票(最後の住所を示すためのもの)
④失踪を証する資料(手紙や電話の記録などど)
⑤申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本など)

 

申し立てる家庭裁判所は、不在者の「最後の住所地」を管轄する家庭裁判所です。

申し立てられる方は、失踪者と利害関係を有するものとなります。

失踪宣告が確定すると、不在者は死亡したことと同じにみなされます。
通常の死亡と同様に相続が開始しますので、不動産登記やまた死亡保険金の受け取りなども、死亡した場合と同じように手続を進める事ができます。

所在不明の相続人の住所地を調べるため戸籍収集を行っていると、住民票や戸籍附票で「職権消除」という記載を目にすることがあります。

各自治体では、住民税や国民健康保険料の滞納、親族や近隣の方の申し出などで、居住していない可能性がある場合、各自治体の職員が税徴収などと同時に居住の調査を行います。

この実態調査で、長年不在であることが明らかな場合(居住の実態がない、居住のアパートが取壊されているなど)、各自治体の職権で住民登録を消除する場合があります。

これが「職権消除」と呼ばれるものです。

住民登録がないと、国民健康保険に加入することや、実印の印鑑登録を行うことができません。
弊所でご相談を受けた事例でも、失踪宣告の対象となるような長年連絡が取れない方は、このような住民票の職権消除がなされていることが多くあります。

失踪宣告が確定すると、不在者は死亡したことと同じにみなされますが、失踪宣告をされた方が見つかった場合、一旦出された失踪宣告を取り消す手続きも取ることができます。

この場合、既に行われた相続手続きが全て取り消されるわけではなく、他の相続人など利益を受けたものは「現に利益を受けている限度」として返還することになっています。(民法第32条第1項第2項)

 

尚、失踪宣告を行わない限り、戸籍からは原則、死亡の記載がなされることは無く、戸籍上消えることがありません。横浜市の例ですが、下記の神奈川新聞の記事によりますと、横浜市内だけで、120歳以上の高齢者が2200人以上戸籍上生存している事になっています。

>戸籍上は「生存」とされる120歳以上の高齢者が全国で見つかっている問題で、横浜市内に本籍があり、戸籍上120歳以上の登録者が2247人に上ることが、同市の27日までの調査で分かった。最高齢は江戸時代末期の1840(天保11)年生まれの170歳の男性で現在の港北区に在籍となっている。いずれも住民登録を基にしている年金支給や介護保険サービスは受けていない。市は横浜地方法務局と協議し、死亡している可能性が高い高齢者の戸籍の管理適正化を進める方針。(神奈川新聞 2010年8月28日付け記事から引用)

司法書士法人近藤事務所でも、おそらくこの内の何名かに当たる方の戸籍を見たことがありますが、失踪宣告を品限りどうにもならないのが現状です。

 

実際に1から失踪宣告を申し立てみたケース

次のページにて、「実際に1から失踪宣告を申し立てみたケース」を具体的な例と時系列に応じて説明をしております。詳しい流れを知りたい方は是非ご参照ください。

 

実際に1から失踪宣告を申し立ててみたケース | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

 

司法書士法人近藤事務所では、失踪宣告のご依頼についても、親切丁寧にご相談に対応させていただきます。
ご予約専用ダイヤルは0120-926-680になります。

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