相談例104 相続人不在なら従兄弟の私が相続できますか?

前回相談をした、横浜市の者です。

同じ横浜市に相続人がいない60代の従兄弟がおり、従兄弟は今年定年退職しましたが、仕事人間なこともあり、生涯独身でした。
なんだかんだで従兄弟の日常の世話や入院時の保証人の世話などを頼まれています。

最近は「近々老人ホームに入るかもしれない。その時は保証人になってくれ。親族だから無償で」などと都合のいいことを言っています。


でも私は親族で、従兄弟の世話をこれだけしておりますので、遺言などは無くても問題なく相続財産を貰えますよね?

 

【回答】

 

被相続人に法定相続人が1人もいない場合、遺言書も残されていなければ、相続財産を受領する人がいません。
この場合、受領する人のいない相続財産を管理するため、利害関係人等が請求により、
家庭裁判所は、被相続人の財産を管理や負債の清算を行う「相続財産清算人」を選任します。


相続財産清算人が選任されたら、まず相続人捜索の公告を行います。
大半のケースでは相続人は既にいないことは戸籍等で明らかですので、この場合、家庭裁判所の判断により、被相続人と特別の縁故のあった者の請求に基づき相続財産の全部又は一部を与えることができます。


しかし、実際に相続財産を受領できるとしても下記のプロセスを経る必要があります。

 

①相続財産清算人選任の申立(民法952条1項)

被相続人(亡くなった方)の相続開始時の住所を管轄する家庭裁判所に申立をします。

②相続財産清算人選任の公告(民法952条2項)

相続財産清算人選任と、相続人がいる場合、この期間内に相続権を主張すべき旨を公告します。公告期間は6ヵ月です。

③相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告(民法957条1項)

相続財産清算人選任公告の官報掲載日から2ヵ月を経過しても相続人が現れない場合、相続財産清算人は、2ヵ月以上の期間を定めて、相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告をします。

④ 特別縁故者への財産分与の申立(民法958条の2)

財産分与を求める者から被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。

この申立は、上記相続人捜索の公告(民法958条)の期間満了の翌日から3ヵ月以内にする必要があります。

⑤ 家庭裁判所の審判

家庭裁判所が、特別縁故者の申立て内容などを総合的に勘案し、審判をします。

 

特別縁故者に対する相続財産分与 | 裁判所 (courts.go.jp)

 

上記でもわかる通り、官報の公告などの期間も含め、そもそも申立てから相続財産の帰属が決まるまでに、最低でも「1年半」の期間がかかります。その上、そもそも従兄弟で日常の生活での交流があったくらいでは、そもそも特別縁故者として認められるのか、相当に難しいのではないかと思います。

 

この点については、次回以降の相談で解説していきたいと思います。

 

 

 

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

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