相談例48 (遺言書/相続)例⑧余命宣告された方の遺言

姉が末期ガンと診断されホスピスに入院しています。
数か月単位で余命宣告をされていて、本人にも告知されています。

姉には行方不明となった子供1名がいますが、40年以上連絡が取れないままです。
姉は財産を弟である私に残したい、と言っています。

ホスピスの職員や看護師さんから「遺言を聞き取る証人になることができる」と言われましたが、この遺言で大丈夫でしょうか? 司法書士の方にも相談をしたいと思いました。

【回答】

おそらくは民法第976条の死亡の危急に迫った者の遺言のことを言われているのかと思われます。

  • >民法第976条(死亡の危急に迫った者の遺言)
    1 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
    2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
    3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
    4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
    5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

証人3名の立ち合いのもとで、遺言を口授(くじゅ)すれば、代筆でも可能とする珍しい条文です。
同様に「話ができない方」「耳の聞こえない方」にも同様の規定があります。
しかしながら、代筆によるためトラブルのもとともなりやすいことも想定され、実際の現場ではあまり使われていることはないのが現状かと思います。

また「遺言の日から20日以内に、証人など家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない」とされており、家庭裁判所による確認審判が要件です。

ただ家庭裁判所による確認審判がされたことをもって、有効性を認めるものではないとする高裁判例もあります。
つまり自筆証書遺言の検認と同じく、この確認hは危急時遺言の効力発生要件ではあるものの、既判力として遺言の有効性までもが確定するものではないということです。

結論としては、やはり遺言を残される方が筆記が可能な状態であるならば、通常通りの自筆証書遺言を残して置く方が安全と言えるでしょう。早急に弁護士や司法書士の方に相談をお勧めします。

*本件は業務上の経験と個人的な見解とに基づき記載しておりますので、判例等を指し示しているものではございません、内容の正確性、法的整合性等ついては一切の保証をできかねます。各相続のケースでは各専門家の指導の下、個別具体的な判断お願い致します。

司法書士法人近藤事務所では、遺言書の作成についても、親切丁寧にご相談に対応させていただきます。
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