相談例42 (遺言書/相続)実際にあった遺言書の文例②

実際にあった相続の遺言書の文例

「贈与」と書かれた遺言

 自筆証書遺言については、弁護士、司法書士などの専門家の目を通さずに作成されることが大半です。よって、自筆証書遺言に基づく相続手続きついては、司法書士である私たちも頭を悩ませるような文面に直面する事が、多く見られます。例えば「あげる」、「持つことにする」などの文言が使われていることがあります。

 頭を悩ませたのは、『私が死んだら(特定の相続人)Aに対して「贈与」する』と記載された自筆証書遺言でした。この場合はどうすればいいでしょうか。贈与は生きている者同士の法律行為であり、死者である被相続人と生きている相続人(受贈者?)との間で成立するとは考えられません。

民法第549条

贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 遺言執行者としても、また単に相続登記を受任する場合でも、こうした場合、まず法務局との照会が重要になります。当然法的な根拠を求められますが、自筆証書遺言の場合、遺言の文言も様々ですので、ピタリと合致するものがある場合はめったにありません。

 

その際よく用いるのが、下記の判例の「理由」の部分です(最高裁昭和58年3月18日判決)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/874/066874_hanrei.pdf

判例はかいつまんで説明すると次の通りです。

遺言書を残した甲は、妻に遺贈する、妻の死亡後は子に分割して相続させるいう遺言をしました。

 妻への遺贈として不動産の登記手続きをして名義書き換えを行ったところ、これに対して子は、妻が死亡することを条件に、子へのに不動産の所有権が移転するという、相続による不動産登記の抹消を求めたという事案です。

 遺言書の法律的な解釈としては無くはないのかもしれませんが、何となく常識的におかしい判断な気がします。

 これを覆すために最高裁判所が取った理由付けが「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである」との記載です。

 つまりは「遺言書全体の趣旨をよく読んで判断しなさい」とのことですね。法律云々以前に一般常識としても、上記の理由は何となく整合性が取れると言えます。

 さて、上記の『私が死んだら(特定の相続人)Aに対して「贈与」する』と記載された自筆証書遺言については、どうでしょうか。

 これは平たく解釈すれば「(遺言者の)死後に誰誰にあげたい」という意思表示であることは、多くの人にとって素直な解釈だと思います。本件についても、横浜地方法務局管内の法務局ですが、無事不動産登記を受け付けてもらうことができました。もちろん相続人間の争いもそもそもなかったのですが。

*本件は業務上の経験と個人的な見解とに基づき記載しておりますので、判例等を指し示しているものではございません、内容の正確性、法的整合性等ついては一切の保証をできかねます。各相続のケースでは各専門家の指導の下、個別具体的な判断お願い致します。

司法書士法人近藤事務所では、遺言書の作成についても、親切丁寧にご相談に対応させていただきます。
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