認知症の相続人がいる場合の遺産分割はどうなる?成年後見と生前対策を横浜の司法書士が解説

当事務所(司法書士法人近藤事務所)では相続の無料相談を実施しています。

事務所がある横浜市を中心として神奈川県全域から相続のご相談を多数受けていますので、相続でお困りならお気軽に無料相談をご利用ください。

今回は近年増えている相続と認知症に関するご相談について司法書士が解説します。

よくあるご相談

横浜市在住の父が亡くなりました。相続人は娘である私と、80代の認知症の母の2名です。母は横浜市内の老人ホームに入居しており、回復の見込みがないとのことです。母には相続させずに、すべて私が相続することはできますか?

このようなご相談は横浜でも非常に多くいただきます。結論から申し上げると、お母様の同意なしに娘様だけがすべてを相続することは、原則としてできません。ただし、成年後見制度を活用することで遺産分割協議を進める道はあります。詳しく解説します。

なぜ認知症の相続人がいると遺産分割ができないのか

遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意することで成立する「法律行為」です。法律行為を有効に行うためには、意思能力(自分の行為の結果を理解できる判断能力)が必要です。

ご相談のお母様のように、認知症により判断能力を欠く状態にある方は、この意思能力がないと判断されます。そのため、

・遺産分割協議への参加ができない

・遺産分割協議書への署名・押印ができない

・相続放棄の申立てもできない

という状況になります。仮にお母様が署名・押印したとしても、意思能力がない状態での法律行為は無効となり、後から問題になる可能性があります。

解決策:成年後見制度の利用

認知症の相続人がいる場合、家庭裁判所に成年後見開始の申立てをして、成年後見人を選任してもらう必要があります。選任された成年後見人がお母様に代わって遺産分割協議に参加することで、手続きを進めることができます。

成年後見開始の申立て先

申立てはお母様の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。横浜市内に住所がある場合は横浜家庭裁判所が管轄となります。

申立てに必要な主な書類

・申立書

・本人(お母様)の戸籍謄本・住民票

・医師の診断書(所定の書式)

・申立費用(収入印紙・郵便切手)

・財産目録・収支状況報告書

重要:娘様が成年後見人になることは難しい

今回のケースでは、娘様(相談者)がお母様の成年後見人に選任される可能性は低いと考えられます。

その理由は「利益相反」です。

今回の遺産分割協議では、娘様とお母様の間で利害が対立しています。娘様がすべてを相続しようとすれば、お母様の取り分が減ることになります。このような利益相反関係にある場合、家庭裁判所は娘様を成年後見人に選任せず、弁護士や司法書士などの第三者専門家を成年後見人として選任するのが一般的です。

また、成年後見人はお母様の利益を守る立場ですので、娘様が希望するような「すべてを娘が相続する」内容の遺産分割協議には同意しない可能性が高く、法定相続分(娘:1/2、母:1/2)に近い内容での分割を求めることが通常です。

成年後見制度のデメリット

成年後見制度には、以下のようなデメリットがあります。相続が発生してから申立てを検討する場合は、これらを十分に理解した上で判断することが重要です。

  • 申立て費用がかかる:家庭裁判所への申立て費用(数万円)のほか、鑑定が必要な場合は追加費用が発生します
  • 成年後見人は家庭裁判所が選ぶ:希望の人物が選任されるとは限りません
  • 報酬が継続的に発生する:専門家が成年後見人に選任された場合、お母様が亡くなるまでの間、毎月報酬(月2〜6万円程度)が発生します
  • 財産はお母様のためにしか使えない:成年後見人はお母様の財産を他の目的に使うことができません
  • 途中でやめることができない:一度申立てをすると、本人が亡くなるまで原則として取り消すことはできません
  • 自由な遺産分割が難しい:成年後見人はお母様の法定相続分を守る義務があるため、他の相続人の希望に沿った分割内容に同意しないことがあります

相続税申告への影響にも注意

認知症の相続人がいて遺産分割協議ができない場合、相続財産は「未分割」の状態になります。未分割のまま相続税の申告期限(10ヶ月以内)を迎えると、以下の特例が適用できなくなります。

・小規模宅地等の特例(土地の評価額を最大80%減額)

・配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)

これらの特例が使えないと、相続税の負担が大幅に増加するケースがあります。成年後見の申立てには数ヶ月かかることもあるため、相続発生後は早急に専門家へ相談することが重要です。

根本的な解決策:生前対策が重要

このようなトラブルを防ぐ最善の方法は、お父様が元気なうちに生前対策を講じておくことでした。相続が発生した後では取れる選択肢が限られてしまいます。

①公正証書遺言の作成

遺言書があれば、遺産分割協議をせずに遺言の内容で相続手続きを進めることができます。「全財産を娘に相続させる」という内容の遺言書があれば、今回のような問題は発生しませんでした。

ただし、遺言書があっても遺留分(法定相続分の1/2)はお母様に保障されているため、完全にゼロにはできません。

②家族信託の活用

家族信託は、元気なうちに財産の管理・承継先をあらかじめ家族に託しておく制度です。成年後見制度よりも自由度が高く、認知症になった後でも家族が柔軟に財産を管理・活用できます。

例えば、お父様が元気なうちに「娘に財産を信託し、認知症になっても娘が財産を管理できるようにしておく」という設計が可能でした。

よくある質問(FAQ)

Q. 成年後見を申立てずに、認知症の母を除いて遺産分割協議をすることはできますか?

できません。遺産分割協議は相続人全員の参加と合意が必要です。認知症のお母様を除いた状態で行った協議は無効となります。後から問題が発覚すると、手続きのやり直しや法的トラブルに発展するリスクがあります。

Q. 成年後見人はいつまで続きますか?

原則として、成年後見は本人(お母様)が亡くなるまで続きます。途中でやめることは原則できません。専門家が後見人に選任された場合、その期間中ずっと報酬が発生します。

Q. 成年後見人に選任された専門家は、娘の意向を無視して勝手に分割内容を決めることができますか?

成年後見人はお母様の利益を守る立場ですが、遺産分割の内容は最終的に相続人全員の合意が必要です。ただし、成年後見人はお母様の法定相続分を下回る内容には同意しないのが通常です。

Q. 今からでも生前対策はできますか?

今回のご相談は相続発生後のため、生前対策はできません。ただし、ご自身の将来の相続に備えて、今からご家族の遺言書作成や家族信託の検討を始めることはできます。

Q. 成年後見の申立てにはどのくらいの期間がかかりますか?

申立てから後見人選任まで、通常2〜4ヶ月程度かかります。相続税の申告期限(10ヶ月以内)との兼ね合いがあるため、相続発生後はできるだけ早く手続きを開始することをおすすめします。

横浜で認知症の相続人がいる相続のご相談は司法書士法人近藤事務所へ

認知症の相続人がいる相続は、成年後見の申立てから遺産分割協議まで、専門的な知識と経験が必要です。また、相続税申告の期限を考えると、早急な対応が求められます。

司法書士法人近藤事務所では、成年後見の申立てサポートから遺産分割協議書の作成、相続登記まで、相続手続き全般をご支援しています。また、将来の相続トラブルを防ぐための遺言書作成家族信託のご相談も承っております。

遺言サポートサービス|司法書士法人近藤事務所

家族信託制度活用 無料相談会|司法書士法人近藤事務所

初回相談は無料です。「どこから手をつければいいかわからない」という段階からお気軽にご相談ください。

相談事例の最新記事

Page Top