相談例109 相続人不存在となった親族所有の不動産を買戻したい
横浜市に相続人がいない60代の従兄弟がおり、従兄弟は2年前に死亡しました。
前回の相談で教えてもらった特別縁故者の申立てをして、家庭裁判所が相続財産清算人の申し立てを行いました。
従兄弟の不動産については、特別縁故者としての財産分与が認められなかったため、私に所有権を移すことはできませんでした。
親族の思い入れのある土地のため、お金を出してでも購入しようと思うのですが、登記ではどのような手続きが必要になるのでしょうか?
【回答】
売買契約の締結者が相続財産清算人である場合には、相続財産清算人の資格を確認することと、契約内容が裁判所の許可審判の内容と合致しているかを確認します。
相続財産清算人の資格は、家庭裁判所の選任審判書により確認します。
また、売却許可の審判をうけるためには、買受人の住所氏名および売却金額等が特定されている必要があるため、許可審判の後で売主および買主の合意による変更はできません。
相続人不存在と相続財産清算人
民法951条は、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」と定めています。
相続人不存在により家庭裁判所が相続財産清算人を選任した場合、被相続人名義の不動産の所有権登記名義人の氏名は「亡○○相続財産」へ変更登記を申請する取扱いです。
このため登記の名義については「所有権登記名義人の氏名変更」の登記として「亡○○相続財産」として登記をされます。
*これは相続登記の未了の不動産を、既に亡くなっている方が相続した場合、亡くなっている方の相続人が「亡〇〇」の名義で所有権移転登記をすることも可能ですが
これとは異なり、所有権移転登記を伴わない「所有権登記名義人の氏名変更」と同じ扱いです。
その後、「亡○○相続財産」から、買主に対しての所有権移転登記に必要な書類は下記のとおりです。
添付書類
① 家庭裁判所の相続財産清算人選任の審判書
相続財産清算人の資格を証明する書面として必要です。作成後3カ月以内のものが必要となります。
② 家庭裁判所の権限外行為の許可書
相続財産清算人が家庭裁判所の権限外行為許可書を添付して登記を申請する場合には、通常の売買と異なり、
登記義務者(相続財産法人)の権利に関する登記識別情報(登記済証)の添付は不要です(登記研究606、p.199)。
③ 印鑑証明書
相続財産清算人の印鑑証明書として、次のいずれか1つを添付します。(イ)を添付する場合は3か月以内のものである必要はありません。
(ア) 住所地の市区町村長が作成した印鑑証明書(3か月以内)
(イ) 裁判所書記官が作成した印鑑証明書
(ウ) 登記所が作成した印鑑証明書(3か月以内)
このページの執筆者 司法書士 近藤 崇
司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi
横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。
取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。
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