相続した不動産を共有名義にするリスクを司法書士が解説!
当事務所では相続の無料相談を実施しております。
また、当事務所では司法書士が代表を務める不動産会社を併設しているため、相続に関する不動産に関するご相談も多々いただきます。
その中で今回は遺産の不動産に関する分割方法(分け方)を実際の事例から注意点を解説できればと思います。
ご相談者様のご状況
とある不動産の相続手続きと売却でご依頼をいただきました。
ご依頼者は女性で5人の兄弟でした。
20年前に父が亡くなり、相続不動産の実家(東京都)の相続登記をとりあえず安易に5分の5つ相続登記をしました。
こうした法定相続分での分割のケースはご自身で登記をされる場合等を中心に良くみられるのですが、どのようなトラブルが考えられるでしょうか。
相続人間の認知症のトラブル
今回のケースでは兄弟の1人である、この実家に住んでいる兄が認知症になってしまう場合下記のようなリスクが考えられます。
認知症になった方の財産を関する後見人を立てる場合、家庭裁判所が関与するため、申し立てから実際に後見人が選ばれるまで、早くても2か月程度はかかります。
また、後見人がついた後に不動産を売買する場合、さらに家庭裁判所の売買許可証が必要です。
また売れたとしても、売却価格のうちその兄弟分の相続分を確保しなければなりません。
このように、兄弟の1人が認知症になってしまうと、不動産を売却する際に手続きが非常に煩雑になるリスクがあります。
意見が不一致になるリスク
相続人として登記をされているうちの1人が売買に協力しない場合など、頭を悩ませるのは共有者間の不一致です。
5人もいれば、過去は仲がよかった兄弟だとしてもそれぞれの生活環境や経済環境も異なってきます。
まして、父の相続から20年以上が経ったとなると、よりその差異は鮮明になってくるでしょう。
また兄弟間で既に亡くなられてしまったかたも出て来ているかもしれません。
「今すぐ現金化すべきだ」という人もいれば、「親の思い出があるから売りたくない」という人もいます。
また、値段について合意が得られない場合もあるでしょう。
共有物となってしまった不動産の売却は、現実的には売却にあたり、やはり全員の同意が必要です。
民法上は共有物の共有持分だけを売買することができますが、値段は著しく低くなってしまいます。
このように財産(不動産)を共有で所有する場合、意見が合わずに財産を売却できなかったり、話し合いの仲で関係性が悪くなってしまうリスクがあります。
他の相続人(兄弟)と連絡が取れなくなったり行方不明になるケース
兄弟が5人もいるようなケースでは、 1人ぐらいが疎遠になっているケースは多々あります。
まして、いざ売ろうとした際の最悪のケースとして、その方の住所がわからないなどといったケースもあります。
こうなってしまうと手続きは完全にストップしてしまいます。
戸籍から住所を追いかければいいと思われるかもしれませんが、下住民票というのは居住実態がなければ市区町村の行政機関により住所は消されることもあります。
これを住民票の証除と言います。
また存命だとしても、海外に移住して連絡がつかなかったりすると絶望的です。
こうした調査や費用だけで莫大な時間と費用がかかります。
最終的には失踪宣告であったり、不在者財産管理人選任などまで視野に入れなければなりません。
こうした裁判所への手続きを考えると、現実的にスムーズに売却することが出来なくなります。
贈与税を招いてしまうケース
最後に考えられるのは税金という落とし穴です。
兄弟全員が実家に住み続ける長男の老後資金にしてほしいと話をしていたとします。
しかし、前回の相続登記で不動産を5分の1ずつ登記してしまったばかりに、共有者の5名で得た売買代金の財産の移転について、贈与税がかかってしまう名義があります。
例えば、5名の共有者である不動産の売却代金を5000万円だったとしましょう。
共有持ち分になるので、1人当たり1000万円のお金になります。
長男以外の4人から、売却代金である1000万円を長男に渡してしまった場合、この1000万円については贈与税がかかってしまいます。
また、私どもの他のページでは申し上げましたが、仮に贈与税を回避しようと無理やり登記の名義を戻したとしても、これは新たな財産権の移転とみられてしまいます。
【知らなきゃ損する!?】相続登記をやり直すと税金が課税される?司法書士が解説 | 横浜の相続丸ごとお任せサービス
相続した不動産について、分け方を考えるポイント
とりあえずみんなの名義にしようと、兄弟5人で安易に共有登記をしてしまったばかりに、払わなくてもいい贈与税の対象となってしまうようなケースもあります。
なぜこれほどまでに、多くのが共有名義にしてしまうのでしょうか。
それは、相続が発生した直後の一番大事な時期に、安易に専門家を介さず、法定相続分での一番楽な登記をしてしまうがためです。
法定相続分での登記は、残分割協議書を作らなくても登記を申請してしまうため、一般の方がついつい選んでしまうがちです。
そもそも不動産は、分けることが非常に難しい資産であることを理解しなければなりません。
相続登記は義務化されましたが、遺産分割をおろそかにせず、そもそも誰が相続をするのかよく話し合うべきです。
また、特に専門家である登記の専門家である司法書士、そして不動産売買の専門家である宅建士、両方の視点を必要とすることができます。
相続不動産ではこのような視点が非常に重要になります。
不動産登記というのは、一旦登記をしてしまうと、それは単なる文字ではなく、将来の権利義務を確定するような強い縛りを持ったものであります。
安易な共有名義というのは、問題の解決しているのでなく、先送りにしているケースもよく見られます。
安易な共有名義は、一見「平等」で円満な解決のように見えて、その実態は数多くのリスクを内包しています。そして
その多くは、いざ売却や活用をしようとしたときに初めて顕在化します。
相続登記は「早く終わらせること」ではなく、「どう終わらせるか」が本質です。
目先の手間を省いた判断が、将来の大きな負担につながらないよう、初動の選択こそ慎重に行うべきではないでしょうか。
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